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姫路科学館 館長の独り言

理科(科学)教育に想う  その3(豊かな心を育てる具体策)

 私は、次のような体験を重視した『自然とのかかわり方を学ぶ教育の充実』を行うことが豊かな心を育てることにつながると考えます。

・命を実感する体験活動
 小動物の飼育や植物の栽培を自分の手で行うことが大切です。「ぼく(わたし)のメダカ(アオムシ・アサガオ・・・・)」と、意識して飼育栽培していくと、いつの間にかその生き物が自分の家族のように愛おしくなります。少しでも動きが悪くなったり、色が変わったりしても、「大丈夫かな」「すぐに元気になってほしい」と気になってしかたがないようになります。また、精魂こめて世話をして、新しい命が生まれたり、花を咲かせたり、大きな実がなったりした時のうれしさや世話のかいもなく死んだり、枯れてしまったりした時の悲しさは、自分で育てた者にしか味わうことのできないものです。また、動植物を手でさわったときのあたたかさ・つめたさ・かたさ等は、タマゴっちでは決して感じることはできない感触です。(まさに命の実感です。)

・美しさを実感する体験活動
 自然の持つ本物の美しさは、だれもが自分の目で実感し共有できるものではないでしょうか。寒さに耐えながら見た冬の夜空に輝く星々、星の観察中に偶然見た流れ星、何時間もかけて山を登って見た一面に広がる赤・黄・紫の高山植物の花畑等の美しさは何年たっても記憶に残っています。別の機会に違う星や植物を見た時や一緒に体験した人と話をした時に、感動がつい昨日のことのように思い出されます。目だけでなく体全体で美しさを感じているのです。

・自然の巧みさを実感する体験活動
 自然の巧みさとは、言いかえれば自然の多様性・敏感さ・知恵ではないでしょうか。みなさんは、「秋に桜の花が咲いた」「まだ暑いのにもう秋の花(ハギ・ススキ)が咲いている」「まだまだ大きくなる魚なのにもう卵をもっている」といったことを聞かれたことがあると思います。しかし、どれほどの人が実際に自分の目で見たことがあるでしょうか。それらの現象を新聞やテレビでは「狂い咲き」「異変が起きている」とよく報道されますが、表現としては適切ではないように思います。動植物の方が、人よりも季節や自然の変化を敏感に感じているのではないでしょうか。また、種を保存(子孫を残す)ためにうまく環境に適応しているのではないでしょうか。

・共生を実感する体験活動
 共生とは、生き物が互いに助け合って生きていることであるとよく言われます。みなさんは、共生と聞いて、どのようなイメージをもたれるでしょうか。たぶん、大多数の人は生き物が仲良く一緒にくらしているとイメージされるのではないでしょうか。でも、実際に自分で観察してみると、仲良くとはいいがたい光景を目にします。先日、スズメバチが甘い樹液を吸っている様子を見ていると、同じスズメバチ同士でも、仲良く吸ってはいません。一匹のスズメバチが樹液を吸っているところに、別のスズメバチがやってきて、その樹液を吸おうとすると、先に吸っていたスズメバチは、後からきたスズメバチを羽で威嚇します。けんかが始まるのではないかと期待しますが、後からきたスズメバチは、そんなに逆らうことなく、少し距離を置いたところで樹液を探し、静かに樹液を吸っていました。このように「共生には、生き続けていくために争いを避けてがまんしている部分もある」のではないでしょうか。

・人とのかかわりを大切にした体験活動
 自分の考えや思いを大切にしながら自然(科学)を体験します。自分一人で活動することもあれば、複数でいろいろと意見・情報交換をしながら活動することも多いのではないでしょうか。自分だけではなかなかうまくいかなかった時やどうしていいか分からなかった時、ちょっとした一言やアドバイスによって、つまずいていたことがうまくいくことがあります。そんな時、かかわってくれた人に対して感謝の気持ちが生じます。さらに、次は自分が相談にのれるようがんばろうという思いやりの心も生じます。また、成功した時の喜びも共有できます。

 平成21年8月1日(土)にリニューアルオープンする科学館は、来館者自身が展示装置を活用して科学の事象を実験体験することによって、科学のおもしろさやすばらしさを実感する「他ではできない体験ができる科学館」に生まれ変わります。豊かな心を育てる一役を担える施設であると確信しています。オープンを楽しみにしていてください。
by himeji-science | 2009-02-28 16:01 | 想い

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